HER2タンパク(IHC法)・HER2遺伝子標本作製(FISH法)
免疫組織染色で、浸潤性乳癌細胞の細胞膜におけるHER2タンパクの過剰発現の強度を検出することによって、ハーセプチン(trasutuzumb)の治療対象選択の指標として用いられています。このため、疑陽性の出にくい有病正診率の高い検査が望まれます。
提出方法
固定法
新鮮組織を用い10%〜20%ホルマリン水溶液ですみやかに固定してください。(10%中性緩衝ホルマリン液が望ましい。)
固定液に浸漬する時間は6時間〜72時間以内が望ましく、固定不良や過固定が染色不良の原因となる為十分注意して下さい。
3日以上固定した症例及び、過去の保存検体に関しては染色結果への影響が考えられます。
アセトン系、アルコール系の固定液はHER2タンパク過剰発現の検出および判定には適しません。
手術材料での依頼の場合、固定不良防止の為に腫瘍付近に10%〜20%ホルマリン水溶液を注入する等の処置をお願いします。
材料
適用は10%〜20%ホルマリン固定材料及びパラフィン包埋された病理組織標本のみで、細胞診標本は使用できません。
原則として10%〜20%ホルマリン固定材料及びパラフィン包埋ブロックの受託となりますが、スライドにて提出される場合には切片の暑さ4μmで薄切し、シランコーティング(剥離防止コート)スライドにて2枚以上。FISH法を同時にご依頼の場合は4枚以上のご提出をお願いします。
依頼
検査ご依頼に際しては、必ず当社所定の「病理組織検査依頼書」をご使用ください。
IHC法の結果が陰性の場合で実施するFISH法もIHC法と同時に実施する場合は依頼書にその旨を記載下さい。
HER2(IHC法)における検索対象は湿潤性乳癌細胞及び胃癌細胞です。(病理組織診断名が不明な場合は病理組織検査もご依頼下さい。)
■ 乳癌の判定基準
HER2タンパク過剰発現の判定の際は、癌細胞の膜における染色性およびその染色強度のみを対象とし、細胞質における反応は判定対象外とする。細胞膜における反応性に関しては以下の基準で、スコア0〜スコア3+のカテゴリーに分類する。
判定結果 | スコア | 判定基準の改訂点 IHC法(湿潤部) |
陽性 | 3+: | 強い完全な全周性の膜染色が認められる>10% |
equivocal | 2+: | 不完全および/または弱/中程度の全周性の膜染色が認められる>10%、または強い完全な全周性の膜染色が認められる≦10% |
陰性 | 1+: 0: |
かすかな/かろうじて部分的な膜染色が認められる>10% 染色像が認められない、または不完全およびかすかな/かろうじて幕染色が認められる≦10% |
判定不能 | IHC法、ISH法いずれの検査も技術的問題で実施できない、または、陽性、equivocal、陰性が判定できない場合 |
スコア3+ |
スコア2+ |
スコア1+ |
スコア0 |
以下のフローチャートに基づきハーセプチンの治療対象症例を選択する。
HER2検査は原則として浸潤癌を対象とする。IHC法2+のときは、ISH法(同じ検体)または新たな検査(IHCまたはISH法)を行う。
■ 胃癌の判定基準
細胞膜における特異的反応を判定対象とします。乳癌とは異なり、全周性ではなく基底膜および側方側の細胞膜のみに陽性反応が認められる場合もあります。
判定結果 | スコア | 切除標本の染色パターン | 切除標本の染色パターン |
陽性 | 3+ | 強い完全な側方または側方・基底膜側の細胞膜の陽性染色がある腫瘍細胞が一切片上に10%以上 全周異性に認められない場合もある |
腫瘍細胞の染色割合に関係なく強い完全な側方または側方・基底膜側の細胞膜の陽性染色がある腫瘍細胞クラスター(5個以上の集塊) |
境界域 equivocal |
2+ | 弱-中程度の完全な側方または側方・基底膜側の細胞膜の陽性染色がある腫瘍細胞が一切片上に10%以上 | 腫瘍細胞の染色割合に関係なく弱-中程度の完全な側方または側方・基底膜側の細胞膜の陽性染色がある腫瘍細胞クラスター(5個以上の集塊) |
陰性 | 1+ | 弱/ほとんど識別できないほどかすかな細胞膜の染色性がある腫瘍細胞が一切片上に10%以上 腫瘍細胞は細胞膜のみが部分的に染色されている |
腫瘍細胞の染色割合に関係なく弱/ほとんど識別できないほどかすかな細胞膜の陽性染色がある腫瘍細胞クラスター(5個以上の集塊) |
0 | 細胞膜に陽性染色なし あるいは細胞膜の陽性染色がある腫瘍細部が一切片上に10%未満 |
陽性染色なし あるいは細胞膜の陽性染色がある 腫瘍細胞なし |
スコア3+ |
スコア2+ |
スコア1+ |
スコア0 |